LGBT理解増進法が可決、成立した参院本会議(写真:共同通信社)

「LGBT理解増進法」(正式名称は「性的指向およびジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」)が6月16日に参議院で賛成多数で可決・成立し、23日から施行された。

 この法律は、性的マイノリティへの理解を進めることを目的として、「政府に理解増進のための基本計画策定と年1回の施策の実施状況の公表を義務付ける」「自治体や学校や企業における相談窓口の設置を求める(努力義務)」「関係省庁の連絡会議を設置する」といった具体項目が含まれている。

 法案を成立させるために、7年にわたり先頭に立って闘ってきたのは保守系議員として知られる稲田朋美衆議院議員。稲田氏は落選運動を展開され、保守系メディアで叩かれ、県外からも街宣車が押し寄せている。保守層の一部はなぜここまで「LGBT理解増進法」を目の敵にするのか。稲田朋美氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──「LGBT理解増進法」を通すために、どういったことをされてきたのか教えてください。

稲田朋美氏(以下、稲田):2016年、私は安倍政権で政調会長を務めていました。政調会長は様々なテーマに関して党の中に会議体を作ることができる。そこで「性的指向・性自認に関する特命委員会」を設置し、古屋圭司(現衆議院議員)先生に初代特命委員長になっていただきました。

 この特命委員会を立ち上げた数カ月後には「理解を進めるための法律を議員立法で作ろう」という方向性を決めました。私自身も、2020年秋に古屋先生の後を継いで特命委員長を務めました。

 そして、2021年には自民党の作った「LGBT理解増進法案」をもとに、与野党で修正合意して国会に提出する運びになりました。

 しかし、残念なことに自民党で反対が巻き起こり、総務会で日程を理由に執行部預かりとなり、その後2年間は全く議論もされない状況になりました。結果として、この法律ができるまでにおよそ7年を要したのです。

──なぜ稲田さんはこういったテーマに取り組まれるようになったのでしょうか。

稲田:息子の友人や支援者のお子さんに性的マイノリティの当事者がいて、私自身にとっては身近な問題でした。

 2015年6月に、米最高裁が同性婚を認めないことは違憲だとする判断を下したというタイミングで、私もワシントンで講演することになっていたので、講演の最後に「LGBTはイデオロギーではなく基本的人権の問題だと考える」と話しました。

 帰国後、性的マイノリティの当事者の方々から「この問題に取り組んでほしい」と要望があり、私も与党こそ取り組むべきだと考え特命委員会を設置したのです。

──党内や保守系メディア、保守系の支持者から数多くのバッシングを受けたことについて語られています。どんな方から、どのようなバッシングを受けたのでしょうか。