関東地方の小学校での給食風景(写真:つのだよしお/アフロ)関東地方の小学校での給食風景(写真:つのだよしお/アフロ)

(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)

人気の子育て支援、自治体間で格差が露呈

 2010年代後半以後、「流行りの政策」として「育児支援」「子育て支援」が全面に出るようになった。負担の引き下げを端的に表現する「無償化」や「所得制限撤廃」がマジックワードとしてメディアでも強調されている。

 今国会でも「高校無償化」の所得制限撤廃を維新が主張し、政局や、国民民主党が主張する基礎控除等の引き上げなどと絡めて強い関心を集めている。

日本維新の会、25年度中の高校無償化実現を要求 支援金63万円 - 日本経済新聞

 立憲民主党などが主張する「給食無償化」もそうだ。

【代表会見】野田代表、次の通常国会で給食費の無償化の実現へ - 立憲民主党(本文記事のみ閲覧可) 

 2024年10月から児童手当の所得制限も撤廃され、東京都では都内在住の0〜18歳の子どもを対象に月5000円を給付する「018サポート」事業がスタートした。

 自治体レベルでも様々な提案がなされるようになっている。

中学校の制服を所得制限なしで無償化へ 東京・品川区、23区で初:朝日新聞

 現代において、「無償化」や「所得制限撤廃」と絡めた「子育て支援」はまごうことのない「人気政策」になった。

 自治体においても、若年世代住民への訴求と住民の取り合いのなかで、流山市や明石市のように手厚く、きめの細かい支援や移住促進が人気である。ただ、その成果は流山市や明石市のように定量的に評価できるケースもあれば、評価が困難で、むしろ逆効果となる事例も少なくないことが知られている。

 広域自治体の単位に目を向けてみれば、2023年に人口が増加した都道府県は東京都ただひとつであった。ところが貴重な(若年)人口を引き寄せ続けている東京都は、合計特殊出生率が低位で推移していることから、近年、様々な対策の導入に躍起になっている。

 一方で、今度は東京都の豊かな財政状況を背景にした「大盤振る舞い」ぶりに周辺自治体から厳しい批判が出されていることは皮肉というほかない。日本全体でみれば人口増が好ましいわけだが、自治体レベルでみれば「取り合い」なのだ。

東京都と隣接3県の教育格差を懸念、神奈川知事「財政力の違いは圧倒的」…都の高校実質無償化に不公平感募らせる : 読売新聞オンライン