(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)
中居氏引退、窮地のフジテレビ
外観から華やかなテレビ局だが、一歩その中に足を踏み入れると、総じて雑然としている。スタジオだけではなく、デスクもである。その雑然さは一般企業のそれとは比較にならないものである。一昔前と比べればだいぶ変わったが、24時間365日、昼夜問わず稼働しているので、生活感も強く滲み出ている。
だがよく見てみれば、大阪の読売テレビや東京のテレビ東京のように新しいモダンなものもあるが、外観の意匠もバブル期以前のもので奇妙な印象を与えるものが大半だ。
湾岸のお台場にそびえ立つフジテレビ本社ビルはその代表といえる。

現在の技術革新は凄まじい。スタジオも自動化が進み必要な人手は減り、バーチャル合成、カメラのクオリティも日進月歩だ。多くの人が馴染んでいるネット動画は、スマホ一つ、手持ちの小型カメラの機材などで撮影されていたりする。
実際、巨大スタジオの必要性はバラエティ番組などに限られている(地方局のスタジオは総じて小さいが、それでもかたちになっている)。放送業界もデジタル化されたバーチャルスタジオの必要性などを主張しつつ、高額であることから総務省に対して補助を要望してきた経緯もある。
すでに放送の世界でもアナログの大艦巨砲主義の時代は終わりつつあるのは明らかだが、かつての投資の名残でもある箱物にとらわれて身動きできなくなってしまっているかのようだ。
本稿を書いている途中で、中居正広氏の芸能界引退の報が飛び込んできた。
◎中居正広さん芸能界引退 ファンクラブ向けサイトで発表 - 日本経済新聞
一連の疑惑とその後のスポンサー企業のCM出稿停止などにフジテレビが大きく揺れている。かつて、全日、ゴールデン、プライムのすべての時間帯を抑え、三冠王の常連だった同社だが、見る影もないほどに、放送事業者としての窮地に立たされている。
事態は深刻だ。