総務省が「放送免許の取り消し処分」を下す可能性は?

 スポンサーの広告出稿停止、見直しが続いている。すでに50社を超えているという。

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 在京キー局にとどまらず、系列局にも及んでいる。

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 フジテレビ(HD)それ自体は事業のポートフォリオが多様であることから、直ちに経営危機に至るとまではいえないだろうが、経営基盤が脆弱な地方系列局における影響の方が深刻に思われる。

 フジテレビにおけるスキャンダル疑惑が本来は別企業である系列局にも及ぶ時代になった。フジテレビ系列以外の放送事業者においても、不適切な性的接触の有無などを調査する動きが急拡大している

 フジテレビのスキャンダルは幾つもの「不適切さ」が重なっている。

 関西テレビ社長で当時フジテレビ専務だった大多社長の会見によれば、23年6月に問題を把握し社長とも共有したとされる。

タレント中居正広さんのトラブルとフジテレビを巡る経過(図表:共同通信社)タレント中居正広さんのトラブルとフジテレビを巡る経過(図表:共同通信社)
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 でありながら、会見や問題対応までに1年半以上の時間がかかっていること、週刊誌報道による公表がきっかけであってフジテレビの自主的対応ではないこと、番組中止等の動きが遅かったこと、またフジテレビの会見がまったくクローズドで不十分なものであったこと、放送事業者でありながらテレビカメラを入れた会見を拒否したことなどにも強い非難が集まった。

テレビカメラ不可のフジ社長会見、社内外から批判「何のための会見か」…他局でも芸能関係者との関係調査始まる : 読売新聞オンライン

 こうした一連の疑惑に対してネットでは、放送政策を所掌する総務省に対して放送免許の取り消しや電波停止など、厳しい処分を求める声がすでに多数見受けられる。

 気持ちはわからなくはないが、そこは一呼吸おいて、総務省が放送事業者を処分することの意味を冷静に想起したい。

閣議後記者会見でフジテレビの問題について言及する村上総務相=21日午前、総務省(写真:共同通信社)閣議後記者会見でフジテレビの問題について言及する村上総務相=21日午前、総務省(写真:共同通信社)

 総務省による放送事業者に対する行政処分とは、行政による権力の行使であり、いわゆる権力の介入にあたる可能性も懸念されることから極めて慎重でなければならない。放送事業者と、表現の自由の萎縮に繋がりかねないからだ。

 そのことから、放送行政は全般に内容規制に留意した規制になっており、事業者とBPO等の業界団体による自主規制を尊重する経緯がある(それでも日本の放送行政においては様々な課題が指摘されている)。

 直近では、総務省が東北新社メディアサービスが外資規制(外資出資比率違反)に抵触したとして、2021年に衛星放送事業の認定を取り消す行政処分を行っている。だが、特に2000年代以降、多くのやらせ、虚偽報道、番組基準違反が社会問題化したものの、いずれも行政処分ではなく行政指導にとどまってきた。

 そして総務省の行政処分、行政指導を遡ってみても、今回の事例のようなケースでの処分事例はあまり見当たらない。

 とはいえ、これまで放送事業者による自主的規律が十分だったかといえばそうも思われない。いよいよそのツケが回っているようにも思われる。