果たして北朝鮮はどのような軍事偵察衛星を打ち上げるのか

 北朝鮮が「偵察衛星を打ち上げる」と発表したとき、その衛星は、米国や日本と同レベルの衛星で、あたかも韓米日軍の動きを常時監視できる、特に米空母の動きを追跡できるかのように報道したメディアがあった。

 本当だろうか。

 実際に偵察衛星を使って敵軍の動向を解読するには、偵察衛星そのものの能力、種類とその数、その他の衛星との連携、解析員の能力、電波情報との連携などが必要である。

 ただ、北朝鮮が自らが言う「偵察衛星」を打ち上げるレベルに達していることは、核を保有していることを考えれば、脅威となっているのは事実である。

 そこで、日本の安全保障の観点から、北朝鮮が次回打ち上げる「偵察衛星」が現実にどのようなものかを知る必要がある。

 そのため、北朝鮮の偵察衛星開発の経緯を踏まえ、どのような偵察活動ができるのか、また、それを解明するために何をポイントに注目すればよいのか、などを考察する。

1.北朝鮮の偵察衛星開発

 北朝鮮は2021年1月の党大会で、次の5年間で国防力発展5大重点目標の一つである軍事偵察衛星の運用実現を目標に掲げた。

 2022年12月18日に「火星12号」とみられる弾道ミサイルを2発発射し、20メートル分解能試験用カラー撮影機を含む3台の撮影機を高度500キロまで打ち上げて写真を撮影し、2枚の映像を公開した。

 その写真を解析すると、解像度が20~100メートルであった。

 火星12号が運搬できる撮影機は、ロケットが搭載できるペイロード500キロの範囲内の機材に限定されたものだ。

 このことから、今後登場する本格的な衛星ではなく、名称がつかない初期実験用だったかもしれない。

参照:JBpress『北朝鮮が偵察衛星の画像公開、その技術力を徹底検証』(2022.12.26)

 北朝鮮は、2023年(今年)1月1日の朝鮮労働党の大会で、「偵察衛星を短期間で打ち上げる」「その運用を実現する」「2023年の4月までに偵察衛星1号機の準備を完了する」と発表していた。

 また、「気象観測衛星、地球観測衛星、通信衛星を開発する。宇宙強国建設のための衛星発射場を建設すべきである」と強調した。

 その中でも、「宇宙偵察能力の保有が我が国家の防衛力建設の最も重要な先決課題」としていた。

 そして、連続的に複数の偵察衛星を多角的に配置して、衛星による偵察情報収集能力を構築すること指示した。

 北朝鮮は5月31日午前6時27分に、軍事偵察衛星「万里鏡1号」を新型衛星運搬ロケット「千里馬1型」に搭載して打ち上げた。

 だが、第2段階のエンジンの始動異常によって推進力を喪失し、黄海に落下したことを発表した。

 北朝鮮が失敗を直ちに認めるのは異例である。

 ミサイルではなく衛星(軍事用ではある)であること、失敗を韓国・日本などから明かされることを避けるため、また再発射を準備していることなどから、早々の発表に出たのだろう。

 とはいえ、ロケット打ち上げに自信を付けたことは事実だ。