命を預かる以上、定期訓練による技量向上は必須

 これは筆者の持論になるが、一般論としてパイロットの技量と判断力は、訓練生の時に培った基礎的能力で違いが出てくる。そして、航空関連会社に入社してからの経験や訓練によっても差が広がる。

 特に定期訓練の頻度と内容は重要で、これは大手の航空会社になるほど充実しているのが現実である。いくら操縦免許を持っていても、しっかりとした定期訓練で技量を維持向上させないと、多くの乗客の命を預かることはできないのである。

 JALでパイロットを務めた筆者は一時、海外の航空会社より労働条件の良い日本の航空会社に転職を希望するパイロットたちの訓練や採用を担当したことがあった。中には免許を自費で取得した者や、航空会社での路線経験がないに等しい者もいて、不合格者にしたことも少なくなかった。

 プライベートジェットは、パイロット1人で操作できる機種と2人のパイロットが必要な機種とに分かれるが、乗客数は約20人以内のものが多い。

 1人乗りの例ではシーラス社のビジョン、セスナ社のサイテーションマスタングなどがあり、2人乗りの例ではガルフストリーム社(正式社名はガルフストリーム・エアロスペース)や、それに先日のWBC出場のため大谷選手が使い、またインドからウクライナへ電撃訪問するために岸田首相が使用したボンバルディア社のグローバル7500などがある。

大谷選手や岸田首相が利用したグローバル7500。写真は2022年にスイスで開かれたビジネス航空ショーのもの(写真:ロイター/アフロ)

 ちなみにホンダジェットはパイロット1人(乗客7人)とパイロット2人(乗客6人)という2つのスペックに加え、新しいタイプでは最大定員が11人となっている。

 ホンダジェットのパイロット1人仕様では、オートスロットル、オートブレーキなどシステムなど高度な先進技術を搭載し、パイロットの負荷を軽減する設計がとられている。

 しかし、どのメーカーのどの機種であろうと、パイロット1人仕様のコクピットはやはりリスクが高い。仮にパイロットが心身の異常で操縦できなくなったり、何か重大な緊急事態に遭遇したりした場合には、飛行ライセンスを持った同乗者がいなければ助けることもできないだろう。