高度成長期に形づくられた男女の役割分担

 女性の管理職比率が低いことについては、「女性は管理職に向かないからだ」と指摘する声を聞くことがあります。しかし、いまや海外では大統領や首相といった政治のトップが女性であることは珍しくありません。日本においても国務大臣や都道府県知事として活躍する女性政治家はたくさんいます。また、経済界や労働組合などでも組織を引っ張る女性の事例を挙げれば枚挙にいとまがありません。

 一方、男性のほうが管理職に向いているのかといえば、そんなこともないはずです。もし、管理職としての適性が欠けている男性を知っているかと問われれば、誰でも周囲に何人か思い当たる人がいるのではないでしょうか。

 つまり、性別に関係なく、管理職に向いている人もいれば向いていない人もいるのです。それなのに、管理職比率が極端に男高女低になっているのはなぜか。理由はいくつか考えられます。まず挙げられるのは「社会の事情」です。

 高度経済成長期に形づくられたと言われるサラリーマン家庭は、正社員と呼ばれる雇用形態で働く男性が一家の大黒柱として家計収入を支え、女性は専業主婦として家事育児を担当するという役割分担でした。

 それが社会の中で標準的な家庭のモデルとして定着したことから、その後女性の社会進出が進んだ際も、結婚後の家計収入を支えるのは主に男性で女性は家計補助的に収入を得るケースが多く、必然的にパートタイマーをはじめとする非正規社員と呼ばれる雇用形態での就業が多くなりました。

 そんな経緯から、いまも男性は正社員比率が高く、女性は非正規社員比率が高い傾向が続いています。労働力調査より、役員を除く雇用者の内訳を男女別で見てみると、直近10年の正社員と非正規社員の比率は【グラフ2】【グラフ3】の通りです。


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 この10年で大きな変化は見られません。2022年は男性の正社員比率が77.8%。一方、女性は正社員比率が46.6%で非正規社員の比率より低くなっています。さらに、正社員の中に占める男女比は【グラフ4】の通りで、2022年は男性65.2%に対し女性34.8%。男性のほうが2倍近い比率になっています。


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 通常、管理職は正社員から登用されます。そのため、正社員の男女比を見れば、管理職比率が男高女低になるのは必然です。男性が家計収入を支え、女性は専業主婦という標準モデルが社会に浸透した経緯が、現在に至ってもなお男女の管理職比率に少なからず影響をもたらしていることがうかがえます。