知らぬ間に植えつけられる「性別役割分業意識」
そして、最後に挙げられるのは「家庭の事情」です。男性は一家の大黒柱として家計収入を支え女性は専業主婦になるという社会の標準モデルは、家事育児は女性が担うものという性別役割分業意識を家庭内に植えつけました。その意識は、仕事する女性たちにとって大きな縛りとなっています。
ずっと働き続けたいと考えている女性は、結婚や出産というライフイベントを迎えると、どうやって仕事と家庭のバランスをとるかを考えます。しかしながら、結婚や出産というライフイベントを迎えても、仕事と家庭のバランスを考える男性はまれです。
ここに、知らぬ間に植えつけられている性別役割分業意識の影響が色濃く表れています。そして、女性の管理職希望にも少なからず影響を与えているようです。私が研究顧問を務める調査機関「しゅふJOB総研」にて、主婦層を中心とする就労志向の女性に管理職を希望しているか尋ねたところ、希望する人は26.5%でした。
しかしながら、続けて同じ人たちに“もし結婚や出産をしても家庭の制約がなく、100%仕事のために時間を使うことができるとしたら、あなたは管理職になることを希望しますか”と尋ねたところ、希望する人は64.4%にはね上がりました。家庭の制約が、管理職の希望に大きな影響を及ぼしていることがうかがえます。
ただでさえ管理職には大変そうなイメージが付きまとっているのに、管理職になっても家事育児の負担が軽減されないとしたら、管理職になろうという気持ちが萎えてしまって当然です。それは、目の前に平坦な道と、行く手に急な上り坂が見える道との分岐点が現れた時に、おのずと平坦な道のほうを選択する心理と似ています。
心の奥底では管理職を希望している女性がいたとしても、家事育児は女性が担うという性別役割分業意識によって映し出された“行く手の急な上り坂”を避けようと、ホンネを抑え込んでしまっている可能性があるのです。