当初の目論見が外れたローカル線存続策
──JRが発足した時には、北海道、四国、九州という、いわゆる3島会社に基金をつくり、そこから運用益が上がってくることで円滑に経営するという計画がありました。けれども、今の3島会社を見ていると、悲鳴ばかりが伝わってきます。
鳥塚氏:基金をつくって運営するという考え方は間違ってはいなかったと思います。あの時代には、あれしか選択肢がなかったともいえます。けれども、金利が下がってしまったことで、あの時の目論見どおりにはいかなくなった。
日本の社会の変化もあります。昔ながらの「清濁併せ呑む」という考え方が疎んじられるようになり、誰もがこぢんまりとまとまった「良い子」に収まってしまった。事業家も政治家も、皆そうです。その結果として、組織から活力が消えてしまったように感じます。
──JRでさえ、そのような閉塞状況にある中で、さらに経営基盤がぜい弱な地方ローカル線が、これから先、どこに活路を見出せば良いのか。もちろん、簡単に論ずることができないテーマではあると思いますが。
鳥塚氏:鉄道会社の収入は、どこから得られるものでしょうか。これには、地域需要と、地域外需要、すなわち観光需要がある。
地域需要というのは、人口減の時代では頭打ちになっている。もちろん、細かく拾っていけば増やすことは可能です。例えば、オンデマンドバスを運転して乗客を拾うという方式が考えられます。
けれども、そういう仕事をやるのであれば、収入を増やす方法としては観光需要を発掘する方が早いわけですね。私はいすみ鉄道で社長をやっていた時代から、そのように考えてやってきました。この方法には、地域外から来た人が、地元にお金を落としてくれるというアドバンテージもあります。