東京2020オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなった国立競技場(資料写真、写真:アフロスポーツ)

(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

一気に表面化した「汚れた商売」の実態

 2月28日、東京地検特捜部は、東京オリンピック・パラリンピックの運営業務で大規模な談合があったとして、広告最大手の「電通グループ」や業界2位の「博報堂」、「東急エージェンシー」など法人6社と、各社の担当幹部6人および組織委員会大会運営局元次長の森泰夫容疑者の7人を、独占禁止法違反(不当な取引制限)で起訴した。主要な広告会社がすべて談合に参加し、税金を食い物にしていたのだ。

 東京五輪をめぐっては、昨年(2022年)、スポンサー契約をめぐる汚職事件で、大会組織委員会元理事(元電通専務)の高橋治之氏が逮捕され、起訴されている。高橋容疑者が受け取ったとされる賄賂の額は、紳士服大手「AOKIホールディングス」、出版大手「KADOKAWA」など5社から合計約1億9600万円に上っている。収賄側と贈賄側の企業経営者ら合わせて15人が起訴された大規模な汚職腐敗事件である。

 贈収賄事件でも談合事件でも、結局その中心には電通が居座っている。電通にとって、これらのことは当たり前のやり方だった。逮捕された幹部の勝手な暴走ではなかったからこそ、この幹部を批判する声が電通社内から聞こえてこないのだろう。

 電通は広告業界のガリバー企業として怖いものなしの商売をやってきたのだろうが、その汚れた実態が一気に表面化したのが今回の贈収賄事件であり、談合事件だったのだ。