(舛添 要一:国際政治学者)
東京五輪まで50日、IOCも日本側(政府、東京都、組織委員会)も「開催」以外の選択肢を排除している。最終的には新型コロナウイルスの感染状態によるが、変異株の感染爆発などが起こらないかぎり、方針が変更されることはあるまい。
そのことを前提にして、政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長は、2日の衆院厚生労働委員会で東京五輪・開催について、「いまの状況でやるというのは普通はない」と述べた。そして、「規模をできるだけ小さくして管理体制を強化するのは、主催する人の義務だ」とも強調している。
御用学者も開催反対
医系技官出身で政府御用達のトップがやっと少しはまともなことを言ったという印象だが、それは厚労省がかき集めた御用学者的専門家集団ですら開催反対論が強いということだろう。多くの感染症のプロたちは、今の感染状況で、しかも各地で医療崩壊が起こっている中での開催を「狂気の沙汰」だと元厚労相の私に訴えてきている。
菅義偉首相は高齢者への接種を7月末までに完了すべく大号令をかけており、様々な工夫を重ねて98%の自治体がそれを可能だと回答するまでになった。
しかし、東京五輪開会は7月23日だ。海外から選手や関係者が来日するのが1週間前だとすると、7月15日頃までには万全の感染対策が必要である。最大の決め手のワクチン接種も、効果が出るのは1回目の接種から10日から2週間後とされている。変異株については、2回の接種がないと効果が出ないというデータもある。
つまり、6月末までに少なくとも1回目の接種を終えておかねばならないのである。しかも、3600万人の高齢者に接種が済んでも国民の過半数にはほど遠い。頼みの綱のワクチン接種がこのような進捗状態では、五輪開催に不安を感じる人が多いのは当然である。