『パラリンピックと日本 知られざる60年史』の著者で、パラスポーツを支える人々を長年取材してきたジャーナリストの田中圭太郎氏が、パラリンピックムーブメントと障害者を巡る今をレポートする本連載。4回目となる今回は、東京2020五輪・パラリンピックの余韻が冷め、2022年に実施された複数の意識調査の結果などから、パラスポーツや障害がある人を取り巻く環境の現状と課題を考える。
【これまでの連載記事】
◎夏季パラリンピックを2回開催した唯一の都市、東京はレガシーを残せるか
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/72051
◎障害ある人に合わせた職場はこうつくる、50年蓄積したオムロン太陽の知見
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/72515
◎なぜ大分で世界最高峰の車いすマラソン大会が開催されているのか
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/72895
(田中 圭太郎:ジャーナリスト)
観客動員数は五輪、サッカーW杯に次ぐ規模
まもなく2022年が終わる。パラスポーツの1年を振り返ると、3月に冬季北京パラリンピックが10日間の日程で開催された。期間を通してロシアによるウクライナ侵攻が続くなど、異例の状況下で実施された大会だった。
東京2020五輪・パラリンピックから1年が経った8月には、組織委員会元理事による複数のスポンサー選定などを巡る贈収賄事件が発覚。多くの関係者が逮捕・起訴されるなど波紋が広がった。
パラスポーツの多くの競技は、東京2020大会後も、新型コロナウイルス感染対策から無観客で大会が開かれてきた。それが、8月以降は有観客で開催する大会が増えてくるなど、コロナ禍前の形を取り戻しつつある。
一方で、パラスポーツや障害のある人についての意識はどう変わったのだろうか。パラスポーツの認知度が高まったのは間違いない。だが、障害のある人を取り巻く環境や人々の意識は、大きく変わったとは言えないのではないだろうか。
パラリンピックは障害のあるトップアスリートが出場できる、世界最高峰の国際競技大会だ。スポーツイベントとして観客動員数はオリンピック、サッカーワールドカップに次ぐ世界第3位の規模を誇る。