ハチの子も食べた。蜂の巣の中で蠢く白い幼虫だ。それもスズメバチともなれば、大きくて量も獲れる。ハチの子は佃煮や甘露煮のようにした缶詰もあるが、私の知る大人は、獲ったばかりをフライパンで煎って食べていた。

 同じ長野県でも、私が生まれ育った長野市から南に下った諏訪湖の周辺では、蚕の蛹も食べた。もともと養蚕が盛んな地域で、ひと煮立ちさせて絹糸を取れば、当然のことながら中にある蛹が最後に残る。これを調理して食べる。貴重なタンパク源となる。

 その諏訪湖から流れ出す天竜川では、ザザムシを獲って食べた。川底にいるイモムシが細長くなったような水生昆虫の幼虫だ。昔から“漁師”もいた。高速道路のサービスエリアでは地元の名産として売られてもいた。無論、食べたこともある。

食用に供されるコオロギは「養殖もの」

 ただ、コオロギは食べなかった。夏になればあちらこちらで鳴いていたし、子どもでも簡単に捕まえることができた。

 それでも、トイレの隅やジメジメとした軒下に這いつくばり、跳ね回るコオロギを見て、食べようとも思わなかったし、大人たちにも食べる習慣がなかった。