三河一向一揆の寺、勝鬘寺(愛知県岡崎市/写真:PIXTA)

 新しい歴史解釈を取り入れながらの演出が話題になっているNHK大河ドラマ『どうする家康』。第7回放送分では、駿府に残した妻子を見事に奪還。家康はいよいよ三河平定を成し遂げようとしていた。第8回の見所ポイントや素朴な疑問について、『なにかと人間くさい徳川将軍』の著者で、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)

「家康」への改名に一役買った瀬名

 第8回は冒頭から重要なシーンとなった。まだ「松平元康」と名乗っていた頃の家康が、自分の名前をこれからどうしようかと考え込んでいる。書き損じの半紙が散乱しており、かなり悩んでいるらしい。思案した結果、「元康」から「家康」へと改名されるのだが、その理由が有力説とは異なり、ユニークなものだった。

 着想のきっかけとなったのは家康の妻、つまり、有村架純演じる瀬名である。慣れ親しんだ駿府を離れて、三河にやってきた瀬名だったが、居心地がよくて気に入ったらしい。こんなセリフをいっている。

「私は、ここが大好きです。なんだかみんなが一つの家にいるようで」

 これに家康はピンときた。自分の家族にとってだけではなく、家臣や領民にとっても、この三河を一つの家のようにしたい。そう考えて、「家康」と改名することを決意。「三河に来たばかりの瀬名がすでに馴染んでいる」という状況を描きながら、家康への改名理由にうまくつなげているように思った。