NHK大河ドラマ『どうする家康』で、新しい歴史解釈を取り入れながらの演出が話題になっている。第7回放送分では、元康から家康に改名し心機一転、三河平定も間近というときに、家康は一向宗徒と対立。三河で一向一揆が起きることとなった。第8回の見どころポイントや素朴な疑問について、『なにかと人間くさい徳川将軍』の著者で、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)
「気弱なプリンス」から成長してきた家康
暖かな日差しの日が増えて、寒さも和らいできた。春の訪れが近い。4月から環境が大きく変わる人は、準備を始める頃だろう。なかには、人の上に立つ役目を任されるという人もいるはず。どんな組織でもリーダーを務めることは、やりがいと同時に大変さもある。
そんな見習いリーダーや、今まさに苦心している現役リーダーほど観てほしいのが、今回のNHK大河ドラマ『どうする家康』だ。「気弱なプリンス」として描かれた徳川家康がさまざまな困難に直面。それを乗り越えることで、名実ともにリーダーとして成長していく。
しかし、家康といえば群雄割拠の戦国時代に終止符を打った天下人である。江戸幕府を開いて、以後260年以上にわたって太平の世となる江戸時代の基礎を創り上げた。いわば日本屈指の名リーダーだ。
『どうする家康』での家康のように、弱弱しいはずがないと、しらけた人もいたらしい。SNS上でもスタート当初は、打ち出された家康像へのネガティブな意見も少なくなかった。
それが回を重ねるにつれて「家康の成長ストーリーから目が離せない」という視聴者の感想が増えているように思う。この連載で解説してきたとおり、史実を踏まえながらも、家康の人間性にクローズアップするための新解釈に挑戦しているからだろう。
第8回の見どころは、家康のリーダーとしての苦悩と成長ぶりが丁寧に描かれている点にある。「家康三大危機」の一つにも数えられる三河での一向一揆に直面し、若き家康は何を学んだのだろうか。