スクランブル化は合理的だが・・・

 しかし、「公共放送の維持のために受信料を支払ってください」という理屈は、どこまで通用するのでしょうか。NHKや有識者が「公共放送」の意義や理想を標榜したとしても、国民の納得感は十分に得られず、国民とNHKとの「不幸な関係」が深まっていくのではないでしょうか。

 以前からSNSを中心にして、お金を支払った人だけが見られる「スクランブル放送にするべきだ」という意見が噴出していました。ここにきて、受信料不払い者に対する割増金制度の導入が火に油を注いだ感じで、受信料制度への反発とスクランブル化がセットになって、いっそう厳しい意見が増えています。

 私もスクランブル放送が最も合理的だと思います。ただ、視聴料を支払う人が少ない場合、NHKの経営が成り立たなくなる可能性があり、持続可能な仕組みという点で半信半疑です。

 もう一つの考え方は「民営化」です。民放のように、NHKの番組にCMが流れるのは「想像できない」という人が多いかもしれません。しかし、突拍子もない話ではないのです。2005年、小泉政権の時にNHKの不祥事が相次ぎ、政府与党内で「民営化」が議論されたことがあります。

 スポンサーがCMとして広告出稿する仕組みも「大変よくできた仕組み」です。スポンサーは宣伝費用がかかりますが自社の商品やサービスを広くPRできます。放送局はCM料の収入があります。そして、視聴者(国民)は豊かな生活情報を得られます。

 商品やサービスに宣伝費用(CM料)が転嫁されるので、視聴者が宣伝費用を負担することになります。それでも、負担している感覚を持たないので「よくできた仕組み」なのです。

 一方、受信料制度はNHKとしては素晴らしい仕組みですが、人によっては理不尽とも言える「負担感」が国民に重くのしかかります。