NHKも民放も「棲み分け」では一枚岩
仮にNHKの民営化が議論になったとすれば、競合する民放が猛反対するのは必至です。民放は時々、受信料制度を批判しますが、同じ土俵で戦おうとは決して言いません。
NHKも民放も、これまでの棲み分けによる素晴らしいビジネススキームを死守したいところです。両者は「二元体制」の維持という点で一枚岩になります。
しかし、テレビ離れが加速する一方、放送を取り巻く状況は、もはや「二元」どころか「多元」になっています。映像コンテンツの世界は外資系配信会社に加えて、映画、アニメ、ゲームなどの業界も含めて乱立状態です。
冒頭で述べた「トヨタイムズ」のように、放送局に頼らず映像コンテンツを提供する動きはさらに広がるかもしれません。たとえば、国会中継はNHKが放送するのではなく、国会自らがネット配信することも可能でしょう。すべての委員会審議を配信すればよいのです。カメラワークのノウハウなどは必要ですが、大相撲や高校野球なども技術的にはネット配信が可能です。
5Gから6Gへと通信が進化し、デバイスがさらに発達すれば「放送」という概念さえなくなるかもしれません。人々の行動変容や社会趨勢が既得権益の壁を崩します。
そして、映像コンテンツ業界は利害関係が錯綜する中で、再編もありうる合従連衡の「戦国時代」に突入するのではないでしょうか。2月17日には、動画配信大手のU-NEXTが同業で「Paravi(パラビ)」を運営するプレミアム・プラットフォーム・ジャパン(PPJ)を吸収合併すると発表しました。
「戦国時代」において、NHKが業界の中核に位置するのは間違いありません。ただ、業界の発展に貢献するには、国民からの信頼や親近感を獲得し続けることが大事です。その帰趨を決めるのは、悪評がつきまとう受信料制度を見直すことではないかと思います。