NHKの肩を持つつもりはありませんが、メディア環境の変化を踏まえれば、NHKがインターネット事業を拡充するのは自然な流れなのでしょう。また、国民の目線としてもサービスが増えることは利点だと思います。

放送前提の受信料をネット事業に使っていいのか

 しかし、ここで受信料制度の問題が改めて浮き彫りになります。

 民放連と新聞協会は「放送を前提として徴収している受信料をインターネット事業に使うのは問題だ」という主張です。縄張り争いの様相で、そこには国民の利益という観点は感じられませんが、民放連と新聞協会の言い分は合点がいきます。

 NHKの番組を見る、見ないに関係なく徴収する受信料制度に対して、国民の反感は根強くあります。サブスクサービスとの比較で、違和感や嫌悪感を抱くのは昨今の傾向です。そのうえ、拡大を企図するインターネット事業においても受信料の取り扱いが問題視されています。

 このように、NHKの直面する課題の根源は、たいてい受信料制度にあると言えます。

 受信料収入は減少傾向にあるとはいえ、2023年度の見込みは6240億円と莫大な金額です。全国で約2割の世帯が支払わなくても、高齢化社会による契約件数の減少があっても、安定した収入が見込める「大変よくできた仕組み」なのだと思います。

 しかも公益法人であるNHKは法人税を納めなくてよい恵まれた存在であり、受信料によって成り立つ仕組みは、特異だろうが、反発があろうが、NHKとしては永久不変でありたいはずです。

 だから、NHKが受信料問題について語る時は常に穏便で、「みなさまのNHK」の姿勢を前面に出します。