人々のメディアの接触時間は2022年、「携帯電話/スマートフォン」(146.9分)が「テレビ」(143.6分)を抜いて初めて首位になりました。これは博報堂DYメディアパートナーズが15歳から69歳を対象に、「テレビ」「携帯電話/スマートフォン」「パソコン」などのメディアの1日当たりの平均接触時間を調査したものです。

出所:博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所「メディア定点調査2022」
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 スマートフォンで動画を見る若い世代が増えることを意識すれば、放送局も「配信事業」に力点を置かざるをえません。民放は「TVer」、NHKは「NHKプラス」という名称の番組配信サービスを展開しています。

NHKのネット進出を警戒する民放連と新聞協会

 そして、詳細は明らかになっていませんが、NHKはインターネット事業のさらなる拡大を検討しています。

 そうしたNHKの動きに対して、日本民間放送連盟(民放連)と日本新聞協会(新聞協会)は警戒を強めています。両者は軌を一にして、まるで「モグラたたき」のようにNHKの頭を抑え込もうとしています。

 民放連の遠藤龍之介会長は2022年9月の会見で、「NHKのインターネット事業が民業圧迫になるか?」と問われ、「収入の源泉が異なるのだから、抑制的であるべき」と答えています。そのうえで、「大きく踏み越えれば圧迫となるだろうが、現時点で具体的なイメージはない」として、慎重な言い回しながらもNHKを牽制しています。

 同じように、新聞協会も今年2月10日、過去最大の予算額となったNHKのインターネット事業について「巨額の受信料を背景にネット業務を拡大すれば、新聞をはじめ民間メディアとの公正競争が阻害され、言論の多様性やメディアの多元性が損なわれかねない」との見解を発表しました。

 民放はもちろん、新聞としても、NHKのネット世界への進出拡大は脅威に違いありません。「紙」から「ネット」へと、新聞媒体のありようを進化させたいことに加え、民放キー局や地方局といった資本関係のあるグループ企業が影響を受けかねないからです。