“絶対語学力”と“相対語学力”がある

「僕は、語学力には“絶対語学力”と“相対語学力”があって、半分ずつくらいで一人の人の能力が構成されていると思っているんです。“絶対語学力”と言うのは、英語でいえば英検何級とかTOEIC何点とか、そういう、その人の“中”だけにある力。一方で、“相対語学力”は、話す相手によって変わってくる。

 相手が親しい人なのか、初対面の人なのか。会話することに協力的な人なのか、そうではないのか。それによって、コミュニケーションがとれるかどうかは、まるっきり変わってきますよね。

 だから、僕の英語力がどのくらいかというと・・・わからないですね。状況に応じて違うので。アメリカ人やイギリス人相手だとかなり厳しいけれど、アジアやアフリカの人相手では困らない。語学力は本人の中にあるものだけじゃないんだ、ということを、特にこの本を書いてからは、あちこちで強調しています」

 考えてみれば日本語でもそうだ。日本語ネイティブ同士で話していたって、相手によっては話が通じないこともある。

「コミュニケーションですから。日本ではどうしても語学というと、文法的に正しいとか、表現が間違っているとか、そういうことばかりに気をとられて、会話は相手があってこそ成立するものだという当たり前のことが忘れられがちなんですよね」

 英語に関して、もう一つ、高野さんが考えていることがある。「国際英語」と「ローカル英語」だ。