そのひとつが「マイ動詞ベストテン」作りだ。「教科書に出てくる動詞全部を覚えるのは面倒くさいから、最もよく出てくる動詞を厳選して10個だけ覚えよう」と考え、教科書の最初から最後まで、出てきた動詞を「正」の字を書きながらリストアップ。「おっ、トップのdoをtakeが猛追している! 頑張れ!」などと応援しながらベストテンを決めていく。リストは随時更新され、名詞や形容詞、副詞などでも作れる。

「面白がりながら、教科書に出てくる単語をどんどん覚えてしまうわけです。ラクをするためにあらゆる工夫を凝らす、というのは、その後の語学習得でも毎回試みる方法になりました」

幻の怪獣探しで未知の言語を習得

 デビュー作となった『幻獣ムベンベを追え』は、早稲田大学探検部に在籍中に、アフリカ・コンゴ人民共和国(現コンゴ共和国)へ「モケーレ・ムベンベ」という謎の怪獣を探しにいく探検記だが、このとき、高野さんはフランス語とリンガラ語、ボミタバ語を学習している。

「コンゴは旧フランスの植民地なので、公用語がフランス語でした。僕が主体的に語学を始めたのは、この時が最初です。リンガラ語は、コンゴ川流域の共通語で、アフリカでも話者数がベスト5に入るメジャー言語と聞いたので、これが少しでも話せれば、地元の人たちと仲良くなれるのではないかと。そしてボミタバ語は、ムベンベが棲むとされるテレ湖がある地区に住む民族の言語です」

 フランス語はさておき、リンガラ語とボミタバ語は、そもそも文字を持たない言語のためテキストなどはないし、日本では身近に話者を探すことはほぼ不可能。それでも高野さんは人を探し、工夫を凝らして、未知の言語を習得していく。