シカゴ・カブス時代の高津臣吾監督(写真:アフロ)

 劇的なミラクルアーチに神宮のスタンドが歓喜の渦に包まれた。

 プロ野球「SMBC日本シリーズ2022」の第2戦が10月23日に神宮球場で行われ、2年連続でリーグ覇者同士の顔合わせとなった東京ヤクルトスワローズとオリックスバファローズは延長12回の激闘の末にドロー。ヤクルトは3点を追う9回無死一、二塁から20歳の代打・内山壮真捕手が値千金の同点3ランを叩き込み、土壇場で一気に試合を振り出しへ引き戻した。このまま延長戦へと突入し決着はつかなかったが、敗戦濃厚だった試合を引き分けて通算成績を1勝1分としたヤクルトにとっては勝利に等しい結果になったと言える。

日本シリーズ第2戦、ここ一番で冴えた高津采配

 スコアボードに映し出された0―3の数字を見て、もしかすると大半の燕党はほぼ諦めかけていたかもしれない。しかし9回からマウンドに立ったオリックス5番手・阿部翔太投手の代わり端を先頭打者の9番・宮本丈内野手が叩き、中越えの二塁打でチャンスメイク。続くリードオフマンの塩見泰隆外野手も四球を選んで無死一、二塁となるとスワローズ本拠地・神宮球場内の空気が劣勢ムードから徐々に変わっていった。ここで打席に立ったのが、プロ2年目若手有望株の内山だった。

 一発出れば、同点の場面。ベンチの高津臣吾監督は迷うことなく、優れた打撃センスと長打力もある燕の若武者・内山を代打で送り出した。いきなり2球で追い込まれるも内山は慌てることなく3球目のアウトコース低めいっぱいのカットボールをファウルでカット。インコース低目に2球続けて投じられた誘い球のスプリットに手を出さずしっかりと見極めてカウント2―2とすると次の6球目、真ん中高め141キロの直球を狙いすましたかのようにジャストミートした。完ぺきにとらえた打球は勢いよく左翼席へ飛び込んだ。

 まさに「起死回生」の形容詞がふさわしい3ラン――。ダイヤモンドをゆっくりと一周した内山はネクストバッターズサークルにいた山田哲人内野手、そして主砲の村上宗隆内野手らチームメートたちから手荒い祝福を受けた。

 20歳若武者にあの大事な場面での打席を託した高津監督も内山が期待に応えて同点3ランを叩き込んだ瞬間、これ以上ないぐらいに大喜びしていた。こうした光景は非常に印象深く、今の「チームスワローズ」の団結力と強さを象徴するシーンでもあった。