内山の打席では3球目のファウルの際、ベンチで指揮官がペットボトルの水を給水するところもテレビカメラに映し出されていた。やはり高津監督としても気が気でなかったのだろう。ここで大仕事をやってのけた内山も「お見事」の一言であり、パンチ力に加えて肝っ玉も座る燕の未来の正捕手を代打起用した高津采配もまた「ズバリ」とハマった。

ファミリー的な連帯感

 この日の試合時間は5時間3分。実に日本シリーズ史上2番目の長さとなった。23時過ぎにベンチを出た試合後の高津監督は疲労の様子もなく充実し切った表情とともに「難しい試合展開だったが、終盤につれて少しランナーが出るようになった。(内山)壮真の一振りでね、よく追いついたと思います」などと述べ、冷静に振り返っていた。

 今季のスワローズはどうしても“村神様”ばかりがクローズアップされがちだが、若い力の躍動も目覚ましい。この内山といい、ちょうど1カ月前の9月25日・同じ神宮球場で行われたレギュラーシーズン公式戦の横浜DeNAベイスターズ戦においてチームのセ・リーグ連覇決定を決める史上初の新人選手サヨナラ打を放ったドラフト2位ルーキー・丸山和郁外野手といい、数多の若燕たちが頭角を現し、いいところで活躍している。

 選手個々の頑張りと努力、それを引き出す優秀なコーチングスタッフのサポート体制がしっかりと噛み合っているところが、こうした若燕たちの台頭へと繋がっていることは言うまでもない。ただ、そのヒエラルキーの頂点に立つ高津監督がいい意味でスワローズ全体に「ファミリー」的な共存関係を作り上げ、選手一人ひとりに「フォア・ザ・チーム」の強い思いを植え付けている点こそ「今のヤクルトの強さの真髄であり、若い力が次々と芽生えて来る原動力になっている」と評する声もヤクルトOBたちを中心に多い。