聞く者の心震わせた「菅義偉 生涯最大の達成」の言葉

 弔辞は、朴訥な人柄がにじみ出ながら展開していく。アドリブが得意とはいえない菅氏が、当日の会場の様子にまで踏み込んでいく。

「武道館の周りには、花をささげよう、国葬儀に立ち会おうと、たくさん人が集まってくれています。二十代、三十代の人たちが少なくないようです。明日を担う若者たちが、大勢、あなたを慕い、あなたを見送りに来ています」

 あなた。ここでもあなた、が多用される。

 恋文は2人だけの世界に入っていく。しかも政策にまつわる思い出話が多い。一般的に知られない事実も盛り込まれていた。

 まずは2人の出会いのきっかけとなった拉致問題。そして、弔辞のハイライトとなる名言がまもなく飛び出す。「菅義偉 生涯最大の達成」。2012年夏、菅氏が銀座の焼鳥屋で3時間にわたって安倍元首相を口説き、総裁選出馬を決断させた有名なエピソードだ。すでに流布されているエピソードだが、それを「生涯最大の達成」と表現したのは初めてである。世論もメディアも、このキラーワードに震撼した。