なんだ、この庇、どうなっているんだ? 薪が浮いてる?
こうなっている。
かつて藤森照信氏が「ニラハウス」(1997年)の茶室で、輪切りにした薪に針金を通して、天井にびっしり吊っているのを見たことがある。それは、「いかにも手作業な感じ」=「野蛮ギャルド」が面白かったのだが、隈氏を薪を工学的な方法できちんと並べてみせる。これぞ現代建築といわんばかりに。この仕上げを見て、隈氏と藤森氏の違いについて、正面から考えたくなった。いつかどこかで書いてみたい。
施設としては、浴室が素晴らしい。三条市に行ったら、日帰り入浴するべき。隈氏は、トリッキーな手法ばかりが注目されるが、実は「景色のいいところを切り取って見せる」という建築の基本を外さない人である。今回はアポなしで行ったので、浴室の写真が撮れず、申し訳ない。ビジュアルを見たい人はこちら(https://www.snowpeak.co.jp/news/p20220131/)を。
5刷になった『隈研吾建築図鑑』は私にとって初の単著なので、じわじわと売れ続けているのは本当にうれしい。でも、いつか「増補改訂版を」と言われたら、新作の数が多くて大変だ。こまめに見ておかないと。
以下は書籍発行時に連載した記事。
第1回●周回遅れの逆境が隈研吾を国民的建築家に押し上げた
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65115
第2回●丹下、黒川とは全く異なる隈研吾のコスパ感覚
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65116
第3回●じわりと依頼主の信頼を得る隈研吾の高度なコミュ力
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65172
第4回●低予算でも爪痕を残す隈研吾流ゆるふわブランド術
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65173
第5回●隈研吾人気、謎を解くカギは「繰り返しを恐れない」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65174
◎本稿は、建築ネットマガジン「BUNGA NET」に2022年8月3日に掲載された記事を再構成したものです。