参院選の勝利を受けて会見する岸田首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(山本一郎:情報法制研究所 事務局次長・上席研究員)

 2022年参院選が終わりました。候補者・政党関係者の皆さん、自治体の皆さん、投票所に足を運んでくださった有権者の皆さん、本当にお疲れさまでした。

 また、選挙期間中に凶弾に斃れた安倍晋三さんには、深い哀悼の意を表します。容疑者にいかなる事情があったとしても、民主主義への攻撃は断じて許されるものではなく、またテロは容認されないものです。

 神の御許に召された安倍晋三さんの魂に、限りない平安のうちにあることを心よりお祈り申し上げます。

 割と投票率が上がらないのかなと事前には予想されていたものの、安倍さんの不運な暗殺劇などもあり、投票率はほんのり上がって52%台と前回の48%より4ポイント増えました。

 他方、NHKなどの出口調査でも出ましたが、岸田文雄政権の政権運営を「評価する」声は約74%、評価しないが26%と、今回の選挙も自公政権を支持する人が投票所に順当に足を運んだことで、自公政権の勝利、岸田政権への信認と相成りました。

 その結果、岸田政権は当面の資源高によるインフレやエネルギー問題など、主要な経済問題に取り組めることになります。とりわけ、憲法改正をライフワークとして取り組んできた安倍晋三さんの遺志を継ぐという大義名分の下、憲法論議が進めやすくなった岸田政権は、次の衆議院選挙まで3年間、よほどのスキャンダルや経済・治安問題を抱えない限り、フリーハンドで政策推進ができるという黄金期を迎えます。

 野党もすんなり勝たせたいわけではなかったと思いますが、野党共闘は不発に終わり、また32ある一人区での与野党勝敗も沖縄県、青森県などわずかなところで野党が勝利したのみで、惨敗に終わってしまいました。

 野党共闘が不発に終わった理由として、「自民より右」の日本維新の会の浸透と、第三極となる参政党やNHK党などのインディー政党が既存政党そのものに対する批判票を一定数かき集めた結果、本来ならば野党共闘で当て込んでいた自民党政治や自身の生活の現状に不満を持つ無党派層を投票所に向かわせ、左派政党に投票させるという目論見が埋没してしまったことが挙げられます。

 逆説的に、野党共闘とは無関係に、立憲民主党や共産党の基礎的な(オーガニックな)支持層の広がりがなければ、野党がいくら現状批判票の投票を促そうにも、他の政党に流れてしまい意味がありません。この3年間で早急に自前の支持層を増やし、野党共闘に頼らなくても自力で闘える支持基盤を確立していく必要があります。

 先にも述べた投票所での出口調査で74%が岸田さんの政権運営を支持していることは、今の岸田政権の支持率54%から見ても、現状の政権に対して不満を持っている人は野党にも期待できず投票しなかったことを意味します。

 この点について、生徒をほめる教師ならば、「この子には伸びしろしかない」とおだてるところですが、残念ながら本件はリアルな政治の世界なので、今伸びていない政党は死ぬ運命にあります。

 政党要件ギリギリで毎度粘る社民党(旧社会党)の頑張りには涙すらあふれ出ますが、今の左派系野党がヤバいのは、すっかり野党に安住してしまい、争点設定はもちろん、重要な政治家に対して票を集める選挙の司令塔のような存在すらいなくなり、出せる候補はとりあえず公認を出しておいて、あとはお前らの選挙戦での頑張りに任せるという「放置ゲー」の選挙戦術になっているように見える点です。