徴用工問題を巡り、差し押さえ資産の現金化を止めるために「代位弁済」案が浮上している。写真は尹錫悦大統領と、妻の金建希氏(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(ファンドビルダー:韓国人コラムニスト)

 2022年6月28日、韓国のメジャー日刊紙の一つである中央日報は、『日本企業含む「自発的基金」で徴用補償…代位弁済が急浮上』という記事を掲載した。

 韓国大法院は2018年10月30日、徴用被害を受けたとして損害賠償訴訟を起こした4人の韓国人元徴用工に対して、日本企業(日本製鉄)が原告一人当たり1億ウォンずつ賠償することという最終判決を下した。合わせて、韓国大法院は2018年11月と12月にも、勤労挺身隊に動員されて被害を受けたと主張する韓国人(11人)に対して、日本企業(三菱重工業など)が賠償することと、最終判決を下した。

 判決後、日本企業が賠償に応じなかったために、原告は日本企業の韓国内資産に対する差し押さえを要求し、韓国裁判所は承認した。これにしたがって、日本製鉄の韓国内資産であるPNR(韓国「ポスコ」と「日本製鉄」の合弁会社)の株式8万1075株(額面価5000ウォン、合計4億537万5000ウォン)が押収され、三菱重工業が韓国に登録した商標権と特許権が押収された。押収された日本企業の資産は、現金化(売却など)手続きが進行中である。

 このままならば、おそらく2022年8月頃から、押収された資産の一部が現金化され、原告に支給され始める可能性が大きい。日本政府は、この「現金化」を「レッド ライン」と規定し、韓国政府に対して、様々な形で繰り返し警告を発している状態だ。

 もし現金化が実現されたら、日韓関係が破局を迎えることは確実だ。

 すでに、韓国向け核心素材3品目の審査強化措置によって、産業界全般が直接的および間接的被害を受けている韓国は、非常に苛立っている状況である。目の前に近づいた差し押さえ資産の現金化を、ひとまず中断させる目的で、韓国政府が7月4日に「民官協議会」というものを出帆させたのは、このような緊迫した状況が反映された結果だ。

 民官協議会のメンバーは、元徴用工支援団体および訴訟代理人、学界・言論界・経済界の代表など12人だ。 民官協議会が、持ち出す案として有力なのは、「代位返済」という賠償方法だ。

「代位返済」とは、債務者に代わって、第三者が債権者に返済し、後ほど第三者が、債務者に向かって求償権を行使する方法である。つまり、韓国側は、韓国大法院の判決によってもたらされた問題を解決するために、次のような方法を模索するということだ。