ライオンの恩返し
アーシャさんは、シェルターの動物たちが怖がっていたため屋内から屋外の敷地内に出してやった。ロシア兵が近づいてくると何匹かのイヌが彼女を守ろうとして吠えると、一匹のイヌが撃ち殺された。アーシャさんになついているジーナだった。ロシア兵はマシンガンも構えたが、動物の大半は生き残った。爆撃などの巻き添えで亡くなった動物は計16匹だった。
近所のいくつかの施設の動物たちは他にどうしようもなかったのでカギを開けて逃がしてやった。動物たちをおりの中に閉じ込めたまま職員が逃げた他の施設では300匹以上、6割超の動物が餓死する悲劇が起きている。
現在、母のシェルターではライオンが飼われている。シェルターの隣家ではヤギやニワトリ、ブタ、カラス、イヌ、ネコのほかアライグマやクジャクに加えてライオンまで飼われていた。飼い主の男性は足を負傷して病院に運ばれ、飼育係は死亡した。戦闘で隣家から炎と煙が立ち上った。アーシャさんと一緒に働いている職員が動物を救出したのだ。
ライオンのおりはカギが見つからず、ロシア軍占拠下の約5週間、アーシャさんらは水やエサを与えるため通い続けた。ロシア兵がライオンのおりの近くに地雷を設置した。アーシャさんは「そんなことをするなら、私たちの代わりにライオンに水とエサをやって」と言ってタバコを2箱渡すと、ロシア兵は地雷を爆発させた。すごい爆発音が鳴り響いた。
ステージ4のがんと闘う夫のバレリさん(78)がシェルターを継続させるため発電機や燃料、食料、水を運ぶのを手伝ってくれた。戦闘でシェルターの窓やおりが破壊された。ホストメリを占拠したロシア軍をウクライナ軍の砲撃が正確に狙い撃つ。ロシア兵たちは住民がウクライナ軍に位置を通報しているのではないかと疑った。