人生100年時代に必要なのは

 とある人材派遣会社の人に話を聞いたところ、倉庫のアルバイトは、中高年の男性が急激に増えているという。コロナで収入が減少した人、リタイアして収入を増やしたい人などが来るようだ。

 若い頃はテレビ制作という華やかな現場にいた寺岡さんは、倉庫作業に戸惑いや失望を感じないのだろうか。寺岡さんからは、あっけらかんとした答えが返ってきた。

「もともと私は喜怒哀楽が激しくないんですよ。ドラマの現場でも、アイドルや女優さんを相手にしていましたけれど、あまり興奮したことはありませんね。だから別に今の状況も、なんとも思いません」

 寺岡さんに、ほかにパソコンでできる仕事や投資など、自宅でできる副業は考えていないのかと尋ねると、「楽だから今のままでいい」そうだ。

 企業というベルトコンベヤに乗っていれば、いずれは安寧な老後という出口へと運ばれていくはずが、いつの間にかゴールはどんどん先へと伸びている。それなのに、働き続けるには自分のスキルをアップデートしないと、日雇いバイトしかできなくなっている。

 ビブスを身に着けて黙々と作業するおじさんたちと同じ作業を繰り返すうちに、自分に待ち受ける長い人生にげんなりした。