意外においしい医薬品のピッキング作業

 寺岡さんがマンションを購入して以来、バイトとの「二足のわらじ」生活はすでに5年目に入る。平日は会社、土曜日はバイト、休みは日曜のみという1週間だ。

 寺岡さんが週末にやっているという倉庫のアルバイトは時給1100円。最低賃金よりも少し高いくらいだ(東京近郊の場合)。ほかにもっと時給のいいアルバイトがありそうだが……。

「私は土曜日しかバイトに入れないので、時給1500円くらいの好条件のバイトはすぐに埋まってしまうんです。今おいしいのは、ワクチン接種会場の案内係。あれは仕事が楽なうえに、時給が1200~1300円くらいなんですが、人気のせいか一度も入れなくて」

 寺岡さんが最近よく行くのは、医薬品の物流倉庫でのピッキング作業だそう。ピッキングとは、発送する商品をピックアップして、所定の場所に運ぶ仕事である。

「ピッキングはすごく楽なんです。医薬品の箱はとても軽いので、注文票とスキャナを持参して、その棚から取り出してと、基本的には歩き回るだけの仕事です」

 体がきつくないか尋ねると、「普段、会社では座りっぱなしで、体を動かさない。むしろバイトはいい運動になるんですよ」

 寺岡さんは去年1年間だけで、2キロ痩せたという。

 土曜日にバイトを入れることは、奥さんも納得している。普段事務のパートをしている奥さんも、同じアルバイトの派遣会社に登録し、パートがない日はやはり倉庫でバイトしているそうだ。

 倉庫作業のバイトは単発でも入れるし、募集はいくらでもある。寺岡さんのような週1日しか働けない人にはちょうどいいバイトだ。

 しかし、オフィスでデスクワークをしているようなサラリーマンにとって、倉庫作業は環境も仕事内容もかなり違う。中年ホワイトカラーがすんなり馴染める仕事なのだろうか。