50代を襲う住宅ローンと教育費

 長らく独身だった寺岡さんは、50歳を目前に結婚。お子さんにも恵まれた。

「まさか自分が結婚するとは思っていなかったんですよ。息子はまだ小学生になったばかり。さらに困ったことに、マンションも購入してしまったんです」

 たまたま訪れた新築マンションの内覧会で、ローンが組めると言われ、決めてしまったのだ。30年ローンで購入した4000万円の新築マンションの返済額は、月々15万円だ。寺岡さんの会社の定年は65歳だが、60歳でいったん区切りがあり、給料がそれまでの7割くらいになるという。ローンは退職金で完済するつもりだそうだが、その額は1500万円程度だ。

 さらに退職するころには、お子さんの教育費もかかるだろう。しかも、もともと独身で通すつもりだった寺岡さんの老後資金は会社の財形貯蓄のみ。年金の受給額は年間170万円くらいの見込みだから、老後資金も少しは準備しておく必要がある。

 聞けば聞くほど、この先大丈夫なのかと心配になる。ファイナンシャルプランナーが見たら、「今すぐ家計の見直しを!」と言われそうな案件ではないのか。

 本来、寺岡さんくらいの年齢だと、子どもの進学費用と住宅ローンの支払いに終わりが見えて、老後資金を貯めるべき時期だ。でも、寺岡さんの場合、「住宅資金」「教育資金」「老後資金」の三大支出が同時進行している。バイトでもしなければ、いつか限界が来るだろう。

「そうなんですよ、稼げるときに稼いでおかないといけないんです。でも先日も、息子にせがまれて、近所のシティホテルで開かれた『鬼滅の刃』のイベントに行ってしまいました。レストランやグッズの購入で、1日で2万円も使ってしまって……」と笑っている。

 晩婚化やライフスタイルの多様化で、このような家庭は以前よりも増えているのかもしれない。