倉庫バイトは現代の「蟹工船」なのか

 筆者は、物流倉庫の日雇いアルバイトに初めて挑戦してみた。アルバイトサイトに住所や生年月日が確認できる本人確認書類を登録するのみで、職歴や経歴の申告は必要ない。登録が済むと、最短で翌日にはバイトに就くことができる。

 選んだのは「時給1000円、交通費なし、倉庫内カンタン作業!未経験者OK」と書かれた求人だ。

 土曜日の朝9時、倉庫専用のバスが迎えに来てくれるという湾岸エリアの最寄り駅に下りた。どんなバスが来るのかと思ったら、観光地の旅館の送迎バスのような小ぎれいなマイクロバスだ。その駅から乗り込んだのは、筆者と40代くらいの男性の二人だった。

 高速道路の高架下を過ぎると、そこは物流倉庫が並ぶ工業団地。メーカーのロゴがデカデカと掲げられた飾り気のない巨大倉庫の間を、運送会社のトラックが次々と通り過ぎていく。

 到着した倉庫のエントランスは、意外にもビジネスオフィスのようだった。床は真っ白い石のタイルで、ピカピカに磨かれている。スタッフの受付がある階は男女別の広々としたロッカールームがあり、休憩所にはお菓子や軽食の自動販売機と大型テレビ。どこもかしこも小ぎれいなのは、女性が多い職場だからだろうか。

 新人は黄色いビブスを着用させられた。集まったアルバイトの半分は、ビブスをつけて不安そうな面々だが、その隣で「今日は何の作業をやるんだろうね」と口々に語り合っているのは、常勤のアルバイトの中年の女性たちだ。

「それでは、みなさん移動しましょう」

 作業服姿のお兄さんが、親切な声でみんなを倉庫に誘導する。案内された途方もなく広い倉庫はローラーコンベヤが小川のようにうねり、ダンボールがところ狭しと積み上がっていた。

 この日、作業するアルバイトは全部で40人ほど。若い人はほとんどおらず、女性も男性も40代以上の中高年ばかりだ。40~50代の主婦と思われる人たちの中には、東南アジアや中国出身と思われる一団もいる。