「あれ、こんなところでおじさんが働いてる……」
近年、非正規労働の現場で、しばしば「おじさん」を見かける。しかも、いわゆるホワイトカラーの会社員が、派遣やアルバイトをしているケースが目につくようになった。
45歳定年制、ジョブ型雇用、そしてコロナ──。中高年男性を取り巻く雇用状況が厳しさを増す中、副業を始めるおじさんたちの、逞しくもどこか悲壮感の漂う姿をリポートする。
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(若月 澪子:フリーライター)
おじさんにとって、副業は愛人と似ている。
本業(本妻)がありつつも、副業(愛人)をかけもちするおじさん。おじさんたちは、副業では本業のような責任は負いたくないと考える。面倒なことは避け、副業のおいしいところだけ味わいたい。おいしい副業とは、楽で高報酬な仕事のことだが、そんな都合のいい副業(女)はそんなにない。
本業の合間に、周囲に知られないようにコッソリ副業をして、家族にさえ秘密にしているおじさんも多い。そんなところも愛人と似ている。
大手航空会社に20年以上勤めるエンジニアのFさん(47)も、家族に内緒で副業をしている一人だ。週末に、中学生向けの学習塾で講師のアルバイトをしている。
Fさんは趣味がサーフィンとフットサルという、沢村一樹風のイケオジ(イケてるオヤジ)だ。普段は飛行機運航のバックオフィスを担当、飛行機操縦のマニュアル作成やフライトプランの原案作成、飛行機の製造会社と技術的な打ち合わせなどの仕事をしているという。
「最近で言うと、ウクライナ侵攻の影響でロシア上空を日本の飛行機が通れなくなったので、どのコースを通るか、その時に必要な燃料がどれくらいかかるかなどを計算していました」
コロナで大打撃を受けた航空業界。Fさんはコロナ後に、年収が1100万円から800万円まで落ち込んだ。
「ネットニュースなどで、『コロナになって仕事がなくなったCA(キャビンアテンダント、客室乗務員)が、コンパニオンやパパ活をしている』という話題を見かけますが、実話ですよ。職場でCAさん同士がそういう話をしているのを、耳にすることがありますから」
さわやかに内情を暴露するFさんも、「年収800万円なら、別に副業しなくてよくね?」と思ってしまうが、そこは個人の事情がある。