塾講師バイトで一番求められるもの

「娘二人が私立の中高に通っていて、その学費が年間200万円くらいかかるんです。家のローンもだいぶ残っていますし、年収の落ち込みはかなり痛い。会社は副業を黙認している状況です」

 コロナ禍で、週3日はリモートワークとなり、家にいる時間が家族内で一番長くなったというFさん。体力的にも余裕ができたので、内緒で副業を始めることにした。

 有名私立に通う娘と美人妻には、イケてる夫が副業する姿は見せられないということなんだろうか……。

 Fさんは学生時代に経験した塾講師のバイトを探した。かつては中学受験をする小学生に、国語、算数、理科を教えていたという。自身も中学受験を経験し、男子校の中高一貫校から有名私立大を卒業している。

「私はTOEIC900点以上で、仕事では日常的に英語を使っていますから、英語の先生くらいはできるかなと。ただ、うまく教えられるか自信はなかったです。大学生の頃は難しい受験問題も解けましたが、今は厳しいでしょう」

 アルバイトサイトで「週1からOK、土日OK、駅チカ、時給は1800~2500円」というような募集を見つけた。新聞広告などで目にする、首都圏でチェーン展開する学習塾だ。

 Fさんは「家から近いと、家族にバレやすい」という理由で、自宅からは数駅離れた教室を選んだ。採用面接は授業前の教室で、校長と二人でちょっと話して終わりだったという。

 何が採用の決め手だったのだろうと聞いてみると、

「自分で言うのもナンですが、普段から英語を使っていることに加え、コミュ力、人当たりがいいという点が評価されたのではないですかね。あと、塾はサービス業ですから、太り過ぎてなくて、酸っぱいニオイがしないオヤジということも大事なのではないかと」

 航空会社に勤務していること、本業に影響のない土日勤務を希望することも説明したが、校長は本業のことをツッコんでくる様子はまるでなかった。