おじさんバイトを指導するフィリピン人女性
中高年の男性は10人弱ほどいた。そのほとんどが新人用ビブスを付けているので、今日初めてここに来た人ばかりのようだ。
「コレクライ、緩衝材ヲ入レナイト、怒ラレルカラ、注意シテネ」
東南アジア出身の主婦が、新人の中高年のおじさんの指導にあたる。ここでは彼女たちが一番のベテランなのだ。世間一般とはあべこべの上下関係は不思議な感じだ。筆者に教えてくれたのはフィリピンから30年前に来日したという女性。この倉庫では1年ほど働いているそうだ。
この日の作業は商品の梱包。ダンボール内の商品の隙間に緩衝材の紙を詰め込み、テープでダンボールのフタをする。これを作業台の上でひたすら繰り返し、コンベヤに流していく。
単純な仕事だが、ずっとやっているとなかなかいい運動になる。倉庫内は寒いと聞いていたが、10分ほどで、じんわりと汗がでてきた。腕を動かす作業なので、デスクワークをしている人には、肩こりの解消になるかもしれない。
日雇いバイトが怒鳴られるなど管理が厳しい現場もあるそうだが、この倉庫でそういう風景はなかった。寺岡さんは「いろんな現場を試して、仕事がしやすいところを選べばいい。イヤなところは1日で辞めればいいから」と話していた。
昼休みは1時間、ロッカールームの近くに設けられたカフェテリアが利用できる。ここには無人レジのコンビニもあり、広々とした窓から東京湾が一望できた。倉庫作業は現代の「蟹工船」のようなところかと思っていたが、想像とは違った。
しかし、中高年ばかりが地味に働く現場は活気がなく、日本の未来予想図のようにも見える。若い人はもっと時給のいい、別のアルバイトをしているのだろうか。