国民生活レベル「中の中」はカローラも高嶺の花

 さて、この2回の調査で気になるのは「属性」の部分だ。調査員判断として、回答者の生活程度まで記載されている。

 その結果をみると、2回の調査ともに「中の中」が過半数で、「中の上」「中の下」を合わせると、1回目は93.2%、2回目は96.2%と共に9割を超えている。

 この数字は内閣府が行った1970年の「国民生活に関する世論調査」でも、調査員判断として回答者の「生活程度」を記載しているが、そこでも「中の上」「中の中」「中の下」の合計は93.2%で9割超。五輪調査の数字とほぼ一致している。

 高度経済成長が末期を迎えていた当時は、国民の生活水準が上がり「一億総中流」と言われていた。一部の例外を除き、国民社会に際立った格差がなかった時代だ。そんな時代の国民生活の一端が、この調査からうかがえる。電話やテレビなど耐久消費財の所有についての質問があるのだが、その回答結果をご覧いただきたい。数字は所有者の割合だ。

【電話46.3%、冷蔵庫88.7%、白黒テレビ89.6%、カラーテレビ22.1%、ステレオ29.4%、乗用車27.1%、ルームクーラー5.2%、ピアノ5.4%】

「今後2、3年のうちにぜひ欲しいものは」という質問で最も多かった回答はカラーテレビで29.8%、次いで乗用車の17.1%だった。

「中流」の生活水準になったとはいえ、マイカーやカラーテレビはまだ手に入らない世帯が多い、そんな時代だったのである。

 ちなみに、賃金構造基本統計調査でサラリーマンの平均年収を算出すると、1970年は78万9400円。先の世論調査結果とも合致する。2020年は459万8100円だから、5.83倍となっている。消費者物価指数で比較すると、2020年は1970年の3.24倍。

 たとえば、1970年には2代目カローラが登場している。その価格は約44万円。平均年収の52%だ。最近のエントリーモデルは約194万円で、2020年平均年収の36%。今よりも手が出しにくかったということだ。なんとなく時代背景が分かっていただけるだろうか。当時の五輪世論調査の結果は、そんな時代の国民の意識や生活水準を物語っている。