(福島 香織:ジャーナリスト)
新型コロナウイルス感染拡大を力ずくで抑え込み、いよいよ2月4日に2回目の五輪開催を予定通り開催する中国。私が北京に駐在し一度目の北京夏季五輪を取材していた当時、中国はまだ「巨大な途上国」といった面が強かったが、いまや世界第2位の経済大国であり、昨年早々に絶対貧困ゼロ達成を宣言、2028年にはGDPが米国を追い抜くという予測もある。
だが、そんな中国でいまネット界隈を騒がしているのが、「性奴」「生育奴」(性処理や子供を生むために農村で買われ虐待されている女性)の存在を暴露する動画だ。
2005~07年ごろ、私も中国の農村で、誘拐され「嫁」として売られてきた女性のインタビューをしたり、人身売買ブローカーに取材したりした経験があるので、中国の農村の貧困と女性虐待実態のひどさはよく知っている(興味を持たれた方は拙著『中国の女』をぜひ読んでほしい)。
だが、あれから十数年たち、一人っ子政策など女性に対するきわめて不条理な法規が撤廃されて二度目の五輪を迎える中国で、まだこういったレベルの貧困と女性虐待が存在するとは。
ネット上で広がった女性の虐待動画
問題の動画は1月28日ごろ動画サイトで広がり、YouTubeなどにもあがっている。「生育八孩女子」のキーワードを入れれば、関連動画を探すことができるだろう。
簡単に内容をいうと、江蘇省徐州豊県のある農村で、知的障害者と思われる女性が首を鎖につながれて「ぼろ小屋に飼われている」動画がアップされた。気温3度ほどの中で、薄着ではだし。寒そうに震え、縮こまっている。饅頭(マントウ)と粟のかゆのような粗末な食事が与えられていた。