なぜ無惨はお館様の正体を知らなかったのか
すると無惨は長年戦い続けてきた産屋敷一族が何者なのか、その正体をずっと知らなかったことになる。なぜだろうか。
もし1000年から「同じ血筋」の一族が当時から産屋敷を名乗っていたのなら、いくらなんでも自分と同族だと気づくだろう。平安貴族の親類関係は相互に密接しており、しかも遠縁ではなく「同じ血筋」が自身の抹殺活動に携わっている。これを見れば、“同族が私を狙っている”と認識したはずである。
ところが無惨はこれを認知していなかった。少なくとも耀哉は無惨が産屋敷の素性を知らないと認識していた。ならば、ここで言えることは一つである。産屋敷が産屋敷の名字を使い始めたのは、その一族が無惨の滅殺に動き始めてからのことだと言うことだ。
ところで読者の多くは、2人の初対面シーンを読んでいて、両者が「同じ血筋」であることに違和感を覚えはしなかっただろう。両者には重大な共通点があるからだ。それは、産屋敷一族も無惨も、人間離れした無数の特殊能力、異能を使っているところである。
産屋敷一族と無惨がこのような異能を扱える理由だが、無惨のそれははっきりしている。主治医の「善良な医者」が投薬して、授かることになったのである(第127話)。では、産屋敷一族の異能はどこから得たのだろうか。
原作を最後まで読み通しているなら、推理を進める情報は全て出揃っている。それらを整理して整合性を取るならば、答えはあっさり見つかるものだ。もったいぶるのも苦手なので、結論から述べておこう。
わたしは産屋敷一族の始祖と、無惨本人が実の兄弟だったと考えている。