奇跡も魔法もない世界

 点と点を線として結びつけていこう。

 産屋敷一族の異能は歴然だ。隊士たちに、人語を解する鎹鴉を作り出して貸与し、また神のごとき先見の明により時代の先々を読んで理財を確保し、隊士たちの手の甲に「藤花彫り」で手のひらに階級を示す力を与える異能ぶりを乱発している。

 これらの異能は、鬼血術に似ているが、人間としては全く異常の能力である。すると産屋敷一族の異能は、理由もなく授かった不思議な力ではなく、合理的背景によるものとなろう。

 そしてそれは2人の会話から簡単に見通すことができる。

 産屋敷耀哉は対面する鬼舞辻無惨に、「君のような怪物(=無惨)を出してしまったせいで…私の一族は…呪われていた…/生まれてくる子供たちは皆 病弱ですぐに死んでしまう…」と伝えている。無惨が原因で産屋敷一族は、呪われることになったというのだ。しかしこれはどうだろうか。さすがに無惨も半ば呆れた顔で「迷言もここに極まれりだな」とこれを一蹴している。

 そして「私には何の天罰も下っていない/何百何千という人間を殺しても私は許されている この千年神も仏も見たことがない」と言い切って冷笑を浮かべた。

 これは無惨ひとりの解釈ではない。まだ無惨と出会う前の童磨も「極楽なんて存在しないんだよ/人間が妄想して創作したお伽噺なんだよ/神も仏も存在しない」と考えている(第142話)。

 つまり、呪術や魔法の類など存在しない──これが鬼滅世界の現実(リアル)なのだ。