日本の「外交的ボイコット」に中国が激しく嚙みつかない事情

 日本政府が北京五輪・パラリンピックに政府関係者の派遣を見送ると表明。中国側を刺激しないように直接的表現を避けたとはいえ、これが事実上の「外交的ボイコット」であることは明白だ。それでも中国政府は米国などに対抗措置も辞さない構えを見せていることとは違い、日本には思いのほか強硬な姿勢を露わにしていない。

 これに関しても真偽はどうあれ、JOC(日本オリンピック委員会)の一部では「日本選手団が中国国内でも超人気者で北京五輪成功のキーパーソンとなっている羽生選手を抱え込んでいることもあり、一触即発の状況を極力作り出さないようにするため中国共産党・政府側は日本政府の決定にも表立った批判は避け、控え目なコメントに終始したのではないか」と邪推されているぐらいだ。

 一方、日本と同じく「外交的ボイコット」をいち早く表明した米国には羽生の最大のライバル、2021年ストックホルム世界選手権覇者のネイサン・チェンが代表として名を連ねている。両親が中国出身の中国系米国人。米国籍とはいえ血筋から見れば中国側の熱い支持を得ても不思議はなさそうな気もするが、実は真逆なのだという。

「ネイサン・チェンの実父は中国共産党から迫害を受けた歴史のある広西チワン族自治区出身。その実父は中国に嫌気が差し、米国留学と同時に母国を離れる決意をした。北京出身の妻と米国で結婚後、息子のチェンには意図的に中国語を教えなかったという話もある。両親ともに中国を捨て去った上、激しい対立関係にある米国で成功して代表権をつかみ、中国語も満足に話せないネイサンに中国共産党は好印象を持っていない。気の毒な感もあるが、中国系でありながら中国国内における人気度は羽生と雲泥の差だ」(事情通)

 主に西側諸国と人権問題で大きな軋轢を生む中国のもとで開催される北京五輪。その中国でも絶大な人気を誇る羽生が世界中を感動の渦へと巻きこむ演技で金メダルに輝き、何らかの形で問題解決の架け橋となる流れを期待したい。