コロナ禍で浮き彫りになった日本の医療のデジタル化の遅れ。どこに問題があり、どんな可能性があるのか?ヒューモニー連載陣のひとりでもある元日銀局長・山岡浩巳氏と讃井教授がウェブセミナーで考察した。連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第69回。

重要性を増すサイエンス・テクノロジー

 新型コロナウイルス感染症に翻弄されているこの2年間、日本ではデジタル化の遅れが浮き彫りになりました。医療体制に関しても、たとえば新規感染者数や空床数の把握がいまだに電話とファックスで行われていることが象徴的に語られているとおり、デジタル化は遅れています。一方で、コロナ禍は、デジタル技術を活用した遠隔診療/遠隔診療支援が進んだ2年間でもありました。

 このような日本の医療におけるデジタル化の課題をテーマとしたウェブセミナーが、10月11日に開催されました(『新型コロナウイルスの経験と医療DXの可能性』 主催:フューチャー株式会社)。今回は、そのウェブセミナーでの山岡浩巳・元日本銀行局長と私の発言の一部を紹介します。

山岡浩巳(やまおか・ひろみ)
フューチャー(株)取締役、フューチャー経済・金融研究所長。1986年東京大学法学部卒。1990年カリフォルニア大学バークレー校法律学大学院卒(LL.M)。米国ニューヨーク州弁護士。国際通貨基金日本理事代理(2007年)、バーゼル銀行監督委員会委員(2012年)、日本銀行金融市場局長(2013年)、同・決済機構局長(2015年)などを経て現職。現在ヒューモニーにて、『ポストコロナのIT・未来予想図 ~日本がDXを進めるべき本当の理由』を連載中。

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山岡 コロナ禍は、医療についてさまざまな課題を考えさせるものでした。そのひとつとして、サイエンス・テクノロジーの重要性が大きくクローズアップされました。