新型コロナウイルス感染症第5波では、現役世代を中心に重症患者数が過去最多となった。治療法が進歩しているにもかかわらず、重症患者の治療はより難しく、一筋縄ではいかなくなった──重症患者診療の最前線に立ち続けている讃井將満教授(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)が、その現状を報告する。連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第66回。
重症患者数が減ってきました。重症患者数の増減は感染患者数の増減からやや遅れるのですが、最大166人だった埼玉県内の重症患者数は、96人にまで減っています(9月18日現在)。
とはいえ、重症患者を専門に診るわれわれ集中治療医は、今も日々難しい症例に直面しており、新型コロナ感染症の恐ろしさをあらためて感じています。ひと言でいえば、重症患者の病態が多彩になっており、一筋縄ではいかなくなっているのです。
重症化のスピードが速い患者が多かった
重症化に関する第5波の特徴としては、まずワクチン接種の進展により高齢者で重症化する方が激減したことがあげられます。結果的に重症患者の主体は、ワクチン未接種の50代以下に若年化しました。新型コロナ感染症は、高齢者ほど重症化しやすく、若ければ若いほど重症化しにくいとされています。しかし、若年層も一定数は重症化しますので、第5波のように感染者数が膨れ上がってしまえば、重症患者数も増えてしまいます。結局、重症患者数は過去最大になり、重症病床についても逼迫してしまいました。