8月30日朝7時、信号待ちをしていた1台の自動車が、突然の異変に巻き込まれました。後ろの軽自動車が、アイドリング状態のまま衝突してきたのです。
追突された運転者は車を降りて、状況を確認しに行きますが、後ろの軽自動車のドライバーはハンドルに突っ伏したまま動きがありません。
運転していた50代の男性が、新型コロナウイルス感染症で突然死していたのです。
警察が駆けつけた時点では、すでに心肺停止の状態になっていたそうです。追突された側のドライバーやお巡りさんも、車の接触だけでなく、ウイルスの接触感染を検査する事態になってしまった。
悪夢のような話ですが、愛知県東海市の県道で、2021年8月30日、現実に発生した事故、事件にほかなりません。
新型コロナウイルス感染症は、患者を増やしすぎてしまい「自宅療養」が当たり前のようになりつつありますが、それがどのようなリスクを含む事態であるのか、科学の目で冷静にとらえてみたいと思います。
多様化する「20分急変」と「二重の罠」
今回の「東海市ドライバー症状急変事故」は、2020年12月の羽田雄一郎参議院議員のケースが「偏在化」しつつある現実を切り取っていると分析すべきものです。
羽田雄一郎議員の場合は、まず発熱があり、いったん収まったように見え、在宅で様子を見たのち、医療機関に移動する途中の一般車両、後部座席で症状が「急変」したものでした。
こうした症例が増え、直前まで「普通に」話していた人が、生命にかかわる状態に「急変」するという、今回コロナの特徴が「約20分程度」の恐るべき速さであることも、臨床的に確認されてきました。
東海市の事故、今後の捜査や調査の結果が公表されるかは、個人情報でもあり定かでありませんが、患者さん自身、肺炎の症状にあまり気づいていなかった可能性があります。
つまり朝7時、仕事に出るため自分で軽自動車を運転して家を出ている。そして運転中に「容態急変」、信号待ちしている間に心肺停止。ここまで「激変」するという現実を突きつける例は、かつて報道の前例がないように思われます。
突然、病魔に首を絞められるようにして息ができなくなって絶命に至る。しかし、その直前まで患者本人には自覚症状がない。