在韓米軍撤退に向けて戦略を練り直した金正恩総書記。攻めの姿勢で米国に圧力をかけていくと見られる(提供:KCNA/UPI/アフロ)

(金 興光:NK知識人連帯代表、脱北者)

 今月アフガニスタンで政変が起きた。タリバンは米軍がアフガニスタンから撤退するや否や、瞬く間に首都カブールを制圧、政権を奪取した。このタリバンの一連の勝利を目の当たりにし、一番羨ましがっている人物こそ、北朝鮮の金正恩総書記だ。金正恩総書記は韓国から在韓米軍さえ撤退すれば、タリバンのようにソウルに無血入城できると信じているからだ。

 韓国の学界やメディアでは、北朝鮮が在韓米軍の駐留に理解を示しており、韓米の意見を尊重しているとの説も聞くが、笑止千万。それは北朝鮮の本音を全く知らない者の言う戯れ言だ。

 歴史を見ても、金日成主席などは在韓米軍の撤退を望むあまり、ソ連との同盟を解消する素振りさえ見せたものだ。金正日・金正恩親子は、核保有国としての承認を勝ち得た上で、その次に在韓米軍の撤退を実現させることを段階的な目標として堅持してきた。在韓米軍の撤退こそが、彼らの究極の家訓なのだ。

 そして、今回のアフガン政変は、この「段階的戦略」に大きな転換をもたらした。金正恩総書記が、核保有国としての地位確立と在韓米軍撤退という二兎を追うことも不可能ではないと考え始めたのだ。

 本当にそんなことが可能なのか。それを検討するために、金正恩総書記が今回のタリバン政権奪取をどう見ているか、これを転機としてどんな戦略転換を図ってくるのか、順を追って解説する。