最近(8月中旬)は20万人を超える日もあり、7日平均でも10万~15万人に再び急増している。こうした状況が続けば、経済にも再び悪影響が及ぶことは避けられない。
その背景にあるのは政治・社会の分裂状況の深刻さである。
ミシシッピ、ルイジアナ、アラバマ、アーカンソーなど南部の所得水準の低い州を中心にトランプ前大統領の支持者の多くがこの状況においてもマスクの着用とワクチン接種を拒否しているため、感染力が強いデルタ株のコロナ感染が急速に拡大している。
政治面ではバイデン政権が経済立て直しのために必要としている、雇用創出および低・中所得層向け減税、子育て・教育支援のための2つの重要法案に共和党が反対し、審議が停滞しているため、政策も停滞せざるを得ない。
2.バイデン政権の対中政策運営の制約
バイデン政権発足前から米国の中国専門家の多くが、対中政策に関する最低限の改善内容として期待していたことは、中国政府との対話の増加とトランプ前政権が実施した不合理な関税政策や民生品に関する技術摩擦の是正だった。
一方、安全保障に関する技術摩擦、国際的な市場経済・自由貿易・投資環境の条件整備、人権問題などに関してはより洗練された精緻な手法で中国を厳しく追及することが予想されていた。
米中間の対話については、互いに歩み寄りができる要素があれば、対話を重ねるインセンティブにもなり、一定の成果も期待できる。
しかし、現在の米国国内政治の状況を考慮すれば、中国に対して少しでも融和姿勢を示せば議会から厳しく批判をされるのは目に見えている。
この米国の国内政治が制約条件となっているため、米中双方が歩み寄ることを前提とする対話は成立し得ない。
特に最近は、米国側が米中国交樹立の前提である「一つの中国」の合意を無視する行動をとっていることが両国の関係を一段と悪化させている。