中国の少子高齢化は日本以上のスピードで進む可能性がある

1.出生率の急速な低下

 2021年5月11日に国家統計局が2020年に実施された第7次人口センサス(国勢調査)の結果を発表した。

 2020年の出生者数は1200万人、人口出生率は0.85%と1952年の統計開始以来過去最低となった(図表1参照)。

 中国政府は人口増加を抑制するために、1979年から一人っ子政策を導入し、特定の条件を満たす農民や少数民族を除き、原則として二人目の子供を持つことを禁止した。

 最近になって出生率の低下が懸念されるようになり、2015年末の全国人民代表大会(日本の国会に相当)常務委員会で、すべての夫婦が2人の子どもを持つことを認めることを決定し、2016年初から施行した。同時に、育児休暇を延長する方針も盛り込まれた。

 しかし、これにより出生率が上昇したのは初年度の2016年だけで、2017年以降はむしろ出生率の下落が加速している(図表1参照)。

図表1:人口出生率の推移(単位・%)

(資料 CEIC、国家統計局)

2.出生率低下の要因

 このように一人っ子政策を廃止したにもかかわらず、出生率の低下に歯止めがかからない主な要因について、国家統計局は、出産適齢期の女性の人口減少が続いていること、子育てを始める年齢が高まっていること、養育費が上昇していることなどを指摘した。

 これらの指摘に関して、以下の3点を補足したい。

 第1に、出産適齢期の女性の人口減少については、図表1の出生率の推移をみても、1988年以降急速に低下していることから、その約30年後に出産適齢期の女性が減少するのは理解できる。

 1988年以降の出生率低下の原因は中国の第3次ベビーブームの終了である。

 ちなみに、第1次ベビーブーム(1950~58年)は建国後の婚姻法制定を背景とする結婚増加、第2次(1966~70年)は文化大革命による人口政策の中断、第3次(1980年代)は第1次ベビーブームで生まれた子供の世代による出産増加がそれぞれの原因だった。

 第2に、養育費の上昇については、各種教育費の上昇が主因である。

 1980年代以降、一人っ子を前提に、子供の父母とそれぞれの両親(祖父母)の合計6人が一人の子供を養育する生活設計が定着した。

 1990年代までは大学進学率も低く、大学を卒業しさえすれば、いい仕事を得られるという認識が広く共有されていた(大学卒業者数は1990年61万人、1999年155万人、2020年967万人)。

 このため、1人の子供に6人の収入を投入して幼児の頃から英才教育を施すのが平均的な都市住民の間で当たり前のこととなり、それを前提とする高額の教育支出が定着した。

 こうした家計構造の下、急に2人目の子供を持つことを許されても、大半の家庭では2人目の子供に1人目と同等の教育費を支出できる経済的余裕がないため、2人目をあきらめざるを得ないのが実情となっている。