1.バイデン政権は対中強硬路線を維持
ドナルド・トランプ政権からジョー・バイデン政権に移行してまもなく2か月になる。
バイデン政権の対中政策の基本方針はトランプ政権同様、中国を戦略的競争相手と位置付け、対中強硬路線を維持している。
アントニー・ブリンケン国務長官、ジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官、カート・キャンベルインド太平洋調整官、イーリー・ラトナー国防長官特別補佐官など、外交・安全保障面で対中政策を担う主要メンバーは厳しい対中強硬姿勢を示している。
彼らの対中認識は、新彊、香港、台湾、技術摩擦などに関して、トランプ政権の中国に対する基本認識と大きな差はないと見られている。
バイデン政権は新型コロナウイルス感染症の鎮静化と経済回復を当面の最優先課題としており、そのための法案の議会承認には共和党との連携が非常に重要である。
しかも、議会関係者については超党派で対中強硬路線を支持している。
このため、バイデン政権としては当面、議会と歩調を合わせて対中強硬路線を維持することにより、国内政策を円滑に進めることに重点を置くと見られている。
ただし、バイデン政権で対中政策を担う高官は中国問題に精通した人材が多く、中国に対する誤った認識に基づいて政策を運営していたトランプ政権とは大きく異なる。
また、政権として示した方針に関係なく大統領が勝手に行動することもなくなるため、政策の予測可能性が高まると見られている。
国内の重要施策が一定の成果を上げることができれば、夏場以降、対中政策においても徐々にバイデン政権の独自色を出していくと予想されている。
具体的には、関税の見直し、一律に適用している技術摩擦に関する対中制裁措置の選別的運用(部分的緩和)、米中間の閣僚級定期対話の復活、気候変動政策に関する協力の模索などがその検討対象と考えられている。
しかし、外交・安全保障政策面では大きな変化は期待しにくいとの見方が大勢となっている。