私も「日本をもっと良い国にしたい」と思って官僚になった人間です。それだけが理由というわけではありませんが、他人に「リスクを取れ」というばかりではなく、小さいながらも自らリスクをとって日本を活性化するための会社を設立しようと思って、青山社中という会社を立ち上げることにしたのです。

 なにも経産省の現役の官僚に「俺のようになれ」と言っているのではありません。そもそも私の会社は小さな規模の会社で、ここで論じている「メガベンチャー」の文脈に相応しいものではありません。それくらいの覚悟を経産省の側も示さないと、民間のベンチャー企業も育たたないし、本気で「メガベンチャーを目指そう」とも思ってくれないと思うのです。城山三郎さんが『官僚たちの夏』で描いた頃の通産省の官僚たちは、国家を背負う気概を持ち、産業育成のために、時には周囲と軋轢も起こしながらも仕事に邁進しました。熱い覚悟のぶつかり合いが必要なのは、今の経産省でも変わらないと思います。

黒田清隆、一時失脚の理由

 もちろん、「えこひいきをしておカネをドーンとつける」とか「役人にカネをもたせて民間に送り出す」などということをするのであれば、ルール面・ガバナンス面での整備を慎重にしないといけません。

 大河ドラマ『青天を衝け』にはディーン・フジオカ演じる五代友厚が登場しますが、実は五代に関しては、政権から「えこひいき」されたことで大きな問題が発生しています。北海道の開発を担う役所・開拓使の長官だった黒田清隆は、十年計画の満期が来て開拓使廃止が決まったことで、その事業継承のため、部下の役人たちを退職させ、彼らに開拓使の事業を譲渡するというプランを考えます。