であるならば、経産省がベンチャー企業に対して、相当踏み込んだ支援策を提供していくしかないのではないかと私は思うのです。そのために経産省がとるべき方策は三つほど考えられます。

経産省がすべきなのは、意欲あるベンチャーの海外展開後押し

 第一には、日本の土壌があまりに保守的であるのなら、国内でベンチャースピリットを持つ人に対して、最初から海外での事業展開を支援することです。

 それこそ松下電器(現パナソニック)やソニーにしても、最初は国内のマーケットを舞台に成長し力をつけ、それから海外に出ていきました(ソニーはかなり初期から海外展開をし始めましたが)。それはそれで一つの戦略ですが、現在は日本経済の相対的地位もズルズルと下がっていますので、マーケット自体が成長している海外に最初から照準を当てて攻めていくという方法はむしろこれから主流になる可能性さえあります。であるならば、そういう意欲あるベンチャーに対して経産省がどう支援するかがカギになってきます。

かつて日本のベンチャー経営者は世界の若者に大きな影響を与えた。井深大とともにソニーを創業した盛田昭夫が1999年10月に亡くなると、数日後、米アップルの共同設立者で当時は同社の暫定CEOだったステーブ・ジョブズはカリフォルニアでのプレゼンテーションの際に盛田への追悼の言葉を述べた(写真:AP/アフロ)

 第二の方策は、例えばIT系のベンチャーにとってのスポーツ関係やアート関係、食の分野など、ブルーオーシャンに進出することを後押しすることです。経産省がさまざまなフィールドに目を配り、意欲や技術力のあるベンチャーにより成長が望めそうな分野を紹介し、インセンティブ込みのマッチングなどをアレンジすることでそちらへの進出を後押しするのです。

 三つ目の方策は、大企業の中にもベンチャー育成に前向きな企業がありますので、そういう企業とベンチャーとをつなげる役目を果たすことです。伊藤忠商事はミドリムシの活用やバイオフューエルで有名なユーグレナに出資し、成長を後押ししてきました。このような関係をもっと増やしていけるよう経産省でバックアップしていくのです。

メガベンチャー創出には大胆な「えこひいき」が必要

 経産省がより積極的に踏み込むことである程度実現出来そうな三つの方策を列挙してみましたが、とはいえ、保守的で閉塞感漂う状況を突破するには、これだけでは十分ではありません。第一、経産省はこれまでにも、迫力はともかく、似たようなベンチャー育成策はいろいろ打ってきましたが、期待したような成果が出たとは残念ながら言えません。そこにはある「要素」が決定的に抜け落ちていたからです。