李在明氏に対して「歴史ポピュリズム」の批判

 驚くべきは、前日の発言が大きな論争の的になっていても、李在明氏は全く発言を抑えようとしないことだ。

 2日のオンライン記者会見では、「私を反日的と評価する方もいるが、私は日本を憎んだり日本国民に反感をもってはいない。しかし問題は(日本の)保守右翼の政治集団だ」などと述べて、「反日」との批判をかわそうとているかにも見えた。だが同日、「侵略国家である日本が分断されなければならないが、日本に侵略された被害国家であるわれわれがなぜ分断という憂き目に合わなければならないのか」と発言し、大きく報じられた。

 これは口が滑ったというものではなく、彼の信念なのだろう。というのも李在明氏は3年前にも似たような主張を披露しているからだ。京畿道城南市長時代の2018年の3.1節式典の際にも、「侵略国家がその対価として分割占領されることが歴史の法則だったが、残念ながら日本は分割されておらず、代わりに朝鮮半島が南北に分割占領された」とのメッセージを出しているのだ。

 外交部の元幹部は2日の李氏の発言に対し「李知事の発言は、われわれが北朝鮮の南進を防御して自由主義の国際秩序の一員として産業化・民主化・グローバル化・情報化を通じて先進国の道程を着実に歩いてきた誇らしい歴史に対する根本的な否定ともいえる」「大韓民国の正当性とアイデンティティに揺さぶりをかけようとする一種の歴史ポピュリズム先導としか見ることができない」と批判した。

 別の学会要人は「外交的波及を気にするよりは、鮮明性を浮き彫りにして支持層を結集させるほうが重要だと考えたようだ」と懸念を示した。

 つまり、世論の気を引く発言をして支持を集め、大統領選の候補者レースで優位に立とうという戦略が働いているという指摘だ。そういう点が「韓国のトランプ」と評される所以でもある。

 それを感じ取っているのだろう。自身も与党の大統領候補である丁世均(チョン・セギュン)元首相も、李在明氏の批判に回っている。「米軍は占領軍」との発言について「共に民主党の大統領たちは一度もこのような不安な発言をしていない」「党を代表する候補者になるには備えるべき基本的な安定感が必要だ」と批判している。

 李在明氏の歴史観やポピュリズム指向については韓国でも不安を述べる人が多いが、幸いなのはこの時点で彼の思想や正体が明らかになったことだ。韓国がこれから進むべき道を示してくれているのはどのリーダーなのか、大統領選挙に向けて、韓国人自らが見極め、正しく選択する良い機会となるのではないだろうか。